『獣の奏者』読了。

2009年にNHK教育にて放送されたアニメ『獣の奏者(そうじゃ) エリン』の原作『獣の奏者』を読みました。


 『獣の奏者』上橋菜穂子

ひつじが読んだのは文庫版です。
文庫版は、「菊蛇編」〜「鹸扱詈圈廚函岾暗繊廚5冊からなります。
去る10月に外伝が文庫化されたことを受けて、ついに読破する気になった運びです。

アニメ放送時にも、その面白さを何度かブログで紹介しましたが、残念ながらアルバイトの時間とかぶっていたため結局最後までは見れずじまいでした。

アニメと原作で多少の変更はありますが、大本はもちろん同じ。
ファンタジーベースで、人と動物の共生について、生命について、そして家族について扱っています。
「上橋菜穂子だから児童文学だろう」と思ってかかると、嬉しくも手のひらを返される作品です笑゛


大型のトカゲを思わせる姿をした生き物「闘蛇」。
王国では、闘蛇を戦の道具として、馬のように戦車のように使い、大切にしていた。
エリンは、その闘蛇を繁殖させる村の少女であり、彼女の母は闘蛇を診る「獣ノ医術師」だった。
ある日、母が管理する闘蛇・・・闘蛇の中でも「牙」と呼ばれる優秀な闘蛇たちが大量死する事案が起こる。


母と同じく「獣ノ医術師」を志したエリン。
カザルム学舎に通うエリンは、神が遣わした聖なる獣とされる「王獣」にであう。
この世で唯一、「闘蛇を喰らう」生き物であり厳重に保護されている王獣と出会い、
エリンの運命は、そして王国の命運は大きな曲がり角を迎える。


子供の頃、闘蛇の大量死の原因はわからなかった。王獣が保護下で繁殖しない謎も不明のまま。
一児の母となり、学舎で教鞭をとるエリンだったが、真実を突き止めたい思いは心の中でくすぶっていた。
そして、その思いはやがて、王国の歴史に秘められた過去の大災厄の真相へと繋がっていく。


闘蛇はもはや王国だけの武器ではなくなっていた。
他国からの蹂躙を目前とする王国に、躊躇する余地はない。
闘蛇を喰らう王獣を操り、脅威を見せつけねばならない。
聖なる獣とされる「王獣」が戦場に投入されたとき、大災厄の扉が開かれた・・・



おもしろかったです。
純粋に伝奇ファンタジーとして、少女の成長物語として、母の愛情の物語として、「生命」を探求する科学者の物語として、多くの楽しみ方を内包して、面白かったです。

中でも、印象的だったのは、闘蛇・王獣に携わり生命を探求しつづけた「獣ノ医術師」としての姿。


「獣ノ医術師は”獣のため”にあるものじゃないの。
 ”獣と生きる人のため”にあるものなのよ。」
(ソヨン/TVアニメ第5話)


「だから忘れないようにしないとね。
 治療も安楽死も、彼ら(王獣)の判断じゃなくて、わたしたちの判断だってことを」

(エサル教導師長/外伝「秘め事」)


動物を生かし、保護するものとして驕るものは「獣ノ医術師」たらず。
動物本来の「生」を捻じ曲げ、人のエゴイズムに当てはめるものが「獣ノ医術師」たる。
そういった厳しい考えが底流しているように感じました。


また、闘蛇や王獣の生態が明かされていくなかで、実在動物の生態学や生理学などの知識がさりげなく盛り込まれていたのも、ため息を付きたくなるほど感心させられました。
ファンタジーに、少しのリアルを混ぜ込むことで、ここまで真に迫る作品になるのかと。

ただ、ひつじとしては、一生忘れられないだろうなって思った台詞は、それ関係ではなくて、
エリンが自身の生き方について吐露したシーンより一言。


「運命に不意打ちをくらうのがいやなんです。―――気が小さいんですね」
(エリン/鹸扱詈圈


これまでに彼女が歩んだ道、彼女を縛るもの、母として女として人としての気持ちなどなど、
終章に聞くにこれほど重みのある言葉はかつてありませんでした。


◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆◇◇◇


あとがきで、「これは児童文学ではない」と筆者も繰り返し述べていますが、
たしかにこれを中学生が読むのはしんどいと思います。
内容的にも容量的にも。

ですが、高校生以上にはぜひ読んでもらいたいと思います。
主題はなかなかにヘビーですが、動物のことが好きな人でも嫌いな人でも、きっと楽しめると思います。
そして、歳を重ねるにつれ、主人公への共感の幅と読後の感想がかわってくる作品です。

ひつじもたぶん、いつか繰り返して読みたいと思います。

ちなみに、アニメでは、どうやら「恐獣編」までしかしなかったみたいですので、外伝まで文庫化されたこの機会にぜひ原作で。
 

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