『サクラの空と、君のコト』

 5月最後のレビューです。 6月最初のレビューです。


 『サクラの空と、君のコト』
 製作は‘ひよこソフト
 2011年5月発売。
 体験版プレイ時の感想はこちら
   あらすじ
 花びらは遠く舞い上がり、空を桜色に染めた。
桜空と呼ばれるその空は、願い事を叶えると伝えられていた。

 学園に行き、美術部に顔を出し、幼馴染・佳奈多のお見舞いに行く。
天野涼の生活は、ただ漫然とそのことを繰り返すだけになりつつあった。
 佳奈多に見せてあげると約束した「桜空」。
その絵は完成近くにあるものの何かが足りず、それに涼自身納得できないでいた。
 そんな中、降りかかる美術部廃部の通牒。
自分に今できることは何なのか、何をしなければならないのか。
そして、何が、大事なのか。
 求めるものを求めるために、涼は筆をとる。
いつか見た「桜空」を思い描いて。


先に、簡単に評価だけ。

 ストーリー(/25) ◎20点 端的に綺麗な文章と挑戦的な内容
 イラスト(/25) ○17点 飛び回るような立ち絵が楽しい 
 システム(/15) △8点 まだまだ成長過程
 その他(/各7) 長さ7 エロ3 萌え5 笑い5 音楽6

 総合 71点


 ストーリー
 良い意味でも、悪い意味でも
大きく裏切られたゲームでした。
 まず、良い意味の方から。
楽しく明るく元気良くって感じの「ノリゲー」だと思いきや、予想を凌ぐしっかりしたシナリオに驚かされました。特に怜那√と彩√は秀逸。前者は、身分違いの恋という分かりやすい構図ながらも手垢のつかない切り口を展開してくれ、後者は本作のシメにあたる重要な役割を担っていました。意思薄弱、優柔不断な主人公とヒロインたちが成長していく様がドラマティカルに描かれています。その筆致も詩的であったり芸術的であったりすることもありますが、基本的に「ADVゲームのテキスト」という根幹を忘れずに、感傷的かつ端的にまとめられていて非常に読みやすく好感がもてました。
「桜空」というメインテーマから脱線し、全く無関係な路線になったかと思いきや、最後の最後でしっかりと伏線回収していたのも見事。この点は本当に良かったですね。「きつねの窓」のお話が出てきた時なんかは泣きそうになりました(:;
 で、悪い意味の方。
サブキャラの面白さは体験版にすべて置いてきたのか・・・
本作の魅力的なサブキャラとして注目されていたみんと。本編でも縦横無尽傍若無人の活躍を期待していたユーザも多いと思います。にも関わらず、その登場ピークは体験版(プロローグ)部分でしかなく、本編ではかなり絞られての登場となります。
 佳奈多√の凪、怜那√の優佳らはまだなんとか印象にありますが、みんとの中盤以降のフェイドアウトっぷりはあまりにもひどい仕打ち。クラスメイト(崇や寿斗)にいたってはほぼ出番なし;
 当初、各ヒロインのシナリオは絡みあっているものと予想していましたが実際にはほとんど完全に独立した話になっています。このため、個別√にはいってしまえば他のヒロインとの交流も極端に少なくなり、実質的に2人の世界とも言えるように。その狭い世界で物語を上手く完結させた腕力はスゴイと思いますが、やはり脇キャラの魅力値を考えると、なんとか活かして欲しかったです。 


▲個性ありすぎる脇役・みんと。もっと出番が欲しかった;

(以下ネタバレ飯店)
 佳奈多√と千春√の空気っぷりwww
 美術部廃部に際して涼自身が怜那にされたのと同じように、(今度は互いの成長を信じて)彼女を突き放した怜那ルート。
「桜空の奇跡」を全否定し、知識を身につけ鈍重になりながらも前に進むしかない現実を受け入れた彩ルート。
どちらも一般的な感動や爽快感からは遠いですが、非常におもしろかったと思います。
よくある「愛に目覚めた!いちばん大事なものがわかった!ハッピーエンド!」ではなく、その後に「で、どうするの?」という現実的な思考がついてまわる話だったのがとても印象的ですね。
「甘え」という心地よい弱さを乗り越える主人公たちの姿は、「甘えた脚本」に対するメタな皮肉のようにも感じられ、ライターの強い意志が見て取れましたね。
ひつじ的には、価値あるシナリオだったと思ってます。


あ、もしプレイされるなら、彩だけは絶対に最後に攻略したほうがいいと思います;


 イラスト
 なんといっても立ち絵。
体験版の感想でも書きましたが、上下前後左右に動き回る立ち絵がとても楽しい。
また、後ろ向き、見返りの立ち絵なども用意されていて非常に豊富。
全身、上半身、アップと使い分けることで遠近感を出していましたし、そういったふり向きや遠近などの表現力の豊かさは他社のゲームより抜きん出ていたかな、と思います。


▲奥行きのある背景とサイズの異なる立ち絵を用いて、遠くから近づいてくる様子を
 上手く表現できていた。


 一枚絵になると残念な点が目立つのは、さすが元・ケロQの原画家と言っていいかとw
絵画をテーマにした作品なのに、イベントCGで背景の立体感が崩れているのを見るにつけてガックシくるのでもっと気合入れて欲しかったですね。通常の背景は非常に緻密で綺麗なだけに余計にもったいない。
 そうそう、背景の話が出たのでついでに。
イベントCGの中に、通常背景を利用して一枚絵にしてしまっているものがあって驚かされました。
立ち絵のシーンから違和感なくスムーズに移行するので、一瞬立ち絵なのかイベントCGなのかわからないぐらいでした。これは今後も続けて発展していけたら面白いんじゃないかなと思います。


▲食堂の背景を流用してのイベントCG。立ち絵からの移行に違和感がない。


 システム
 バグや詰めの甘さが目立つシステムまわりでした。
特定のルートクリア後に鑑賞モードを選択すると未解放のシーンが回収済み扱いになっていたり、鑑賞モードではテキストウィンドウが消せなかったり、アクティブ/非アクティブ切り替え時に音声バグが生じたりと(^^;
 バグではないですが不便だったのがスキップの遅さ。
共通部分が多いシナリオなのに、「慣れれば読める程度の速さ」のスキップはかなり退屈。未読部分までジャンプか、スキップ速度をあげるかが今後は必要なんじゃないでしょうか。
 ゲーム性はほぼなし。
プロローグ部分で選択肢が2回と行き先選択が3回あるだけで、以降は一切なし。サブヒロイン寄りのルート分岐があったら良かったのになー、と残念でした。


 その他
 長さ
 17時間。ボリュームには文句なし。
内容は賛否あれど、アナザーサイドでしっかりと語り尽くした感がする点には共感でき満足できます。

 エロ
 本編内で2〜3回。おまけシナリオで1回。
1回あたりの尺をしっかり取っていて、エロに関してもボリュームは問題なし。
 問題があるのはやっぱり絵の方。
なんかのっぺりしてて肉感が全然感じられない。

 萌え
 久我先輩とか凪とかわんことか。
萌え要素は結構詰まってると思います。
うーん、、、しかしそれだけに凪が攻略対象外なのは惜しい。

 笑い
 基本的に脇キャラがおもしろい。
主人公ツッコミのヒロインボケというやり取りもそれなりですが、主におもしろいのはなんといっても脇役たち。
 中でも、前評判の高かったみんとは実にいい仕事してました笑゛
時折使われるパロディネタもいい味付けになってました。
笑かして頂きましたv

 音楽
 これも良かった。 
OP、ED、BGMのどれもが作品の雰囲気を盛り立てるいい曲ばかりです。
中でも、2曲あるEDの「Dolce」(vo.片霧烈火)は作詞・作曲をシナリオ担当の篁葉月が書き上げるという多彩ぶりを発揮し、素晴らしい1曲になっています。
 『サクラの空と、君のコト』を締めくくるに相応しい1曲でした!

 総 評
 体験版詐欺・・・と思いきや終盤で思わぬ盛り返しを見せるゲーム。
その「盛り返し」というのが、最近流行りの「どんでん返し」とは違い、正攻法で
真っ向挑んでいるのも素晴らしいです。
 脇キャラの使い捨て、一枚絵のレベル、システム整備などに不満はありますが、
シナリオは大いに評価されて然る良作だと思います。
 「主人公が主体性を得るまでの成長劇」というよくあるジャンルに集約できるものの、
高度な切り口を見せてくれた本作は、是非多くの方に吟味して頂きたいオススメです。




=== === === === === ===
<雑記>

 すっかり遅くなってしまいました;
二日酔いでダウンしたり、家具が届いて模様替えしたり、いとかのが届いてワッショイワッショイしたりしてました。おおいそがしでした。はい。ごめんなさい。(2秒フラット謝罪。
 それはそうと、なんかものスゴく久しぶりに「オススメ」印をつけた気がします。
前にオススメしたのって、なんでしたっけか?
 次回更新は6/3(金)予定です。今度こそがんばる。

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